統計では不妊を訴えて受診した患者さんのうち、筋腫核出術を行なっても、妊娠しない場合もあるのですが、かなりの人が妊娠をしていることも事実です。不妊の原因がつかめない場合には筋腫がその原因となっている可能性もあり、手術を行なうことになります。結果については、手術後の経過の中で診ていくことになります。基本的には、子宮筋腫があるから絶対に妊娠できないということはありませんし、手術をすれば必ず妊娠できるともいえないのです。
妊娠中にみられる骨盤内の腫瘍のなかで、子宮筋腫はもっとも頻度の高い良性の腫瘍です。100人の妊婦のうち、0.3〜2.6人が腫瘍をもっているといわれています。筋腫があっても気づかずに分娩をすませる人もいるので、実際にはさらに多くの人が「筋腫合併妊娠」であると思われます。
妊娠すると女性ホルモンがたくさん作られるようになりますが、このホルモンの働きによって子宮が大きくなっていくのと同時に、筋腫もこの女性ホルモンの働きで大きくなっていきます。特に妊娠前期には女性ホルモンが急に増えるため、筋腫も急激に大きくなります。この時期にそれまで気づかなかった筋腫が発見される事はよくあります。
妊娠中期になると、弾性のある硬い腫瘤であった筋腫は、多くの場合、やわらかく変化し、周囲の子宮の一部のようになってきます。従って、筋腫のほとんどは、胎児の発育や分娩に支障はないと考えられています。特に漿膜下筋腫の場合は胎児への影響は少ないと考えられています。
妊娠中に筋腫への血液の流れが悪くなると、痛みが出る場合があります。急にお腹が痛くなったら、医師の診察を受けてください。多くの場合、安静にしている時間と共に痛みはおさまりますが、鎮痛剤が必要になったり、痛みの刺激によると思われる子宮収縮を抑える薬(収縮抑制剤)などが必要になる場合もあります。
また、変性などを伴う子宮筋腫がある場合、子宮の収縮が薬では抑えきれないと判断された時には手術が必要になる事もあるので、注意が必要です。
妊娠経過中にはじめて骨盤内に腫瘤が発見された場合には、まず、本当に筋腫かどうかに注意しなくてはなりません。卵巣腫瘍など、ほかの腫瘍の可能性も考えられますので、内診所見や超音波検査を行います。どうしても、鑑別がしにくい場合にはMRI検査が役立ちますが、MRI検査の胎児への影響はまだよくわかっていないので、慎重な判断が必要です。鑑別が非常に難しい場合には、検査のために開腹手術が必要となることもあります。
胎児を残したまま筋腫核出の手術をすることはできますが、手術による流・早産の危険性はあります。妊娠中に核出術をやるべきかどうかについてはまだ議論されており、決まった見解はありませんが、よほどのことがないかぎり、核出術は行ないません。 妊娠中期になると筋腫の多くは軟らかくなって、周囲の子宮筋の一部のようになってきます。そのため、かなり大きな筋腫があっても、胎児の発育や分娩には、支障はないと思います。
子宮筋腫が子宮頸部(子宮の入り口)にあるとしても、その大きさによって経過は異なると思います。子宮筋腫は妊娠の経過とともに軟らかくなるものが多いので、頸部の筋腫でもサイズが小さくて、軟らかくなっていれば、赤ちゃんの頭が筋腫を越えて下がってくる事ができます。この場合、帝王切開をしないで分娩することができます。
帝王切開が必要かどうかは、実際に陣痛がおこって赤ちゃんの頭がどの程度下がってくるかで判断します。つまり、帝王切開の準備をしたうえで、時間の経過をみて判断するのです。頸部筋腫の場合、帝王切開になる確率は高いと思います。
「子宮筋腫があると産後の経過がよくない」とよく聞くかもしれません。これは筋腫によって子宮の収縮が悪くなる事があり、産後の出血が多くなる可能性があることからこのように言われているのだと思います。しかし、今日では子宮の収縮剤などが発達しているので、あまり心配する必要はないと思います。
また、産後にたまに筋腫に感染が起こる場合があり、発熱の原因となります。これも抗生物質が発達しているので対応が可能です。ごくまれに、子宮を摘出していないと出血が止まらない、熱が下がらないということもあります。
普通の妊娠とほぼ変わらないと思ってください。一般の妊婦が守るべきことを守れば十分だと思います。ただし、子宮筋腫があると流産や早産を起こしやすい場合もありますので、あまり無理しないように心がけたら良いと思います。
また、まれに妊娠中に子宮筋腫に痛みがでてくることがありますので、お腹に痛みがあるときは、すぐ受診するよう心がけてください。しかし、あまり神経質になりすぎないことです。
産褥期は筋腫に感染症がおこりやすい時期といえます。出産後の子宮では、胎盤が付着していた部分が修復されるあいだ、子宮から膣の法に血の混じった分泌物が出てきます。これを悪露(おろ)とよんでいます。この悪露の量が多くなったり、逆に急に少なくなったり、悪臭を伴うようになったり、腹痛、発熱などがみられたら、すぐに受診してください。
分娩時の出血や授乳などにより、産後にはたくさんの鉄分が必要です。しっかり栄養をとりましょう。出産後も定期健診を受け続け、筋腫の状態をつかんでおくことが大切です。
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